探偵に結婚相手の身元調査や配偶者の浮気調査などを依頼する場合、調査内容は依頼者にとっても他人に知られたくないことです。
そのため、探偵に依頼すると自分の秘密もバレるのではないかと不安になるのもしかたのないことです。
そこでこの記事では、探偵には守秘義務があること、その義務に違反した場合の罰則について詳しく解説しています。
また、自分が探偵から調査対象にされた際の対策についても紹介していますので参考にしてください。

株式会社ワンプロテクト 代表取締役
記事の監修担当者:
髙村 一成 氏
人探し・浮気調査・企業調査などを専門として行うプロ集団「FUJIリサーチ」の代表。アドバイザー・企画課・機動課の3つのチームを構成し、これまで累計3000件以上もの調査を成功させてきた。
探偵が法律で認められている調査範囲はどこまで?

探偵というと、依頼者から頼まれたことはどんなことでも調べ上げるというイメージがありますが、調べられる個人情報は法律で範囲が限られています。
個人情報とは、名前や住所、勤務先など特定の個人を識別できる情報のこと。
さらにその情報単独では個人を識別できなくても他の情報と照合することで識別可能な情報も含むとされています(参考:個人情報に関する法律第1章第2条)。
調査方法についても、探偵はどんな手を使っても許されるというものではありません。「尾行、聞き込み、張り込み」と、正当な理由がある場合の「データ調査」が探偵業法で認められている調査手法です。
こうした合法的な調査法を用いても、調査が許される個人情報と許されない個人情報があります。
調査が許される個人情報
◎名前 ◎生年月日 ◎住所 ◎電話番号 ◎学歴 ◎勤務先 ◎年収 ◎職歴 ◎収入 ◎資産 ◎退職理由 ◎婚姻歴 ◎離婚歴 ◎家族構成 ◎性格 ◎趣味嗜好 ◎親族関係 ◎恋愛関係 ◎友人関係 ◎病気 ◎借金 ◎宗教関係 ◎犯罪歴 ◎いじめ・セクハラ・モラハラ・ギャンブルなどのトラブル ◎浮気や不倫調査(浮気をしている証拠や浮気相手の氏名、住所、行動経路など) |
調査が許されない個人情報
◎戸籍謄本 ◎住民票 ◎銀行口座 ◎ローン残高 ◎出身地や出生地など差別につながる可能性のある事柄 ◎ストーカーやDV(暴力)につながる恐れのある事柄 |
探偵事務所や興信所を名乗る業者の中には、盗聴・盗撮などの違法行為で情報収集する悪徳業者もいます。
しかし、都道府県の公安委員会に「探偵業開始届出書」を提出し、公安委員会から「探偵業届出証明書」を交付された探偵事務所や興信所であれば、合法的な方法で情報収集を行っていますから安心です。
探偵には入手した個人情報を洩らさない守秘義務がある

調査は法律に則った方法で行われても、入手した個人情報を他人に漏らしたりしないだろうかと不安を抱く依頼者もいるようです。
その点についても探偵業届出証明書を受けている優良業者であれば心配ありません。
医師や弁護士、公証人、公務員などに守秘義務が課せられているように、探偵や興信所にも「業務上知り得た他人の秘密を正当な理由なく第三者に漏洩してはならない」と定められています(探偵業法第10条秘密の保持等)。
正当な理由とは、警察や裁判所からの情報開示請求を指します。
守秘義務は、探偵事務所・興信所の所長と探偵に限ったことではなく、パート・アルバイトの事務所スタッフを含む全従業員に課せられています。
守秘義務は現役の従業員だけでなく、退職した後も継続して適応され、違反した場合は罰則の対象となることがあります(罰則については次章で詳述)。
さらに、調査業務に関連する文書や写真その他の資料も外部に漏れないように、資料を管理する専任スタッフを配置したり、資料の不正使用を防止するマニュアルを作成するなど、管理体制を徹底することが求められています。
個人情報を洩らした場合、探偵は罰せられる?

探偵事務所・興信所では、探偵業法はじめ個人情報保護法、民法、刑法などの関連法令について、全従業員に対して教育することも義務化されています(探偵業法第11条教育)。
しかし、教育を怠ったり不十分だったりしたため、従業員のだれかが守秘義務に違反して情報を第三者に洩らしてしまうことがあります。
その場合は公安委員会から罰則を受けることになりますが、罰則は「守秘義務違反」または「教育義務違反」として探偵事務所が受ける行政処分のことで、「指示」と「停止命令」があります。
- 指示:公安員会から違反行為に対する必要な措置を講じるように指示される
- 停止命令:6か月以内の期限を定めて探偵業の全部または一部の営業停止を命じられる
ちなみに、「令和3年度における行政処分の概況(警察庁生活安全局生活安全企画課)」によると、指示を受けた探偵業者は15件、停止命令は0件となっています。
調査された側はケースによって訴えることができる

探偵が尾行や聞き込みをするのは合法とされるので、適切に行われている限り、調査される側は訴えることはできません。
しかし、次のような度を越した行為があった場合は、警察に相談したり、訴訟を起こすことも可能です。
強引な尾行や張り込み
ストーカーまがいの行き過ぎた尾行や張り込みは「つきまとい等行為」にあたり、軽犯罪法違反で30日未満の拘留または1万円以下の罰金を科せられる場合があります。
住居侵入
調査対象者の家に正当な理由なしに無断で入る「不法侵入」と呼ばれる行為で、家の中に隠しカメラや盗聴器を仕掛けたりするために不法侵入した場合は犯罪行為になります。
車にGPSを取り付けるのも違法行為で、3年以下の懲役または10万円以下の罰金を科せられます。
プライバシーを侵害する行為
プライバシーとは、その人の私生活上の事実で、他人に知られたくない事柄、未公表の事柄のことです。
そうした事柄を無断で第三者に公表されて精神的苦痛を負ったという場合に「プライバシーの侵害」が成立します。
これは民法709条の不法行為による損害賠償請求の対象となり、被害者は精神的苦痛に対する慰謝料の意味で探偵に損害賠償を支払わせることが可能です。
さらに、違法な調査をしていることを依頼主が承知している場合は、探偵だけでなく依頼主に対しても損害賠償を請求することができます。
なお、民事訴訟の場合は被害者に「立証責任」があり、探偵の不法行為を証明するための証拠を提示しなければなりません。
名誉棄損にあたる行為
探偵が守秘義務違反をして、調査された側が名誉を棄損された場合は刑法と民法の両方で訴えることができます。
たとえば、浮気調査をされて浮気相手のことなどを不特定多数の人に公表され、それによって明らかに社会的地位や名誉が低下したという場合は刑法230条の「名誉棄損」に該当します。
裁判で有罪となれば、3年以下の懲役または禁錮もしくは50万円以下の罰金が科せられます。
民事の場合はプライバシーの侵害と同様に、名誉を侵害されて精神的苦痛を受けたとして損害賠償を請求することができます。
刑事裁判と民事裁判の違いを簡単に言うと、前者は被告人の罪の有無や量刑を問うところで、後者は主に損害賠償の有無や金額を決めるところです。
また、刑事罰の科料(罰金)は国に支払われるお金で、民事の損害賠償は被害者本人に支払われるお金という違いがあります。
つまり、名誉棄損で訴えられた探偵側は、罰金と損害賠償の両方を支払うことになる場合があるということです。
素行調査や浮気調査などをされた際にできることは?

ここからは自分が素行調査や浮気調査などのターゲット(調査対象)にされた場合の対策について考えてみましょう。
もし、ここ1か月以内に下記のようなことに心当たりがある場合は、尾行や張り込み、聞き込みをされている可能性があります。
- 誰かに後をつけられている気がする
- 同じ人物を何度も目撃する
- 自宅や会社の近くに路上駐車しているクルマがある
- 郵便受けを荒されたことがある
- 自分のことを聞かれたという話を耳にした
調査されていることに気づいた場合は、今すぐ相手を突き止めて調査をやめさせようと思うでしょう。
しかし、相手がプロの探偵の場合は、気づかれたことを察知して違う方法で調査を続行しますからむしろ逆効果です。
調査されているときの対処法としては、尾行などをしている人物はどこの誰かを突き止め、何を調べようとしているのかを明らかにすることです。そのためには同業の探偵に依頼するのが最善策です。
探偵であれば相手が何を調べようとしているのか、だれが依頼したのかがわかりますから、尾行の撒き方やプライバシーを守るための手段を教えてもらうことが可能になります。
警察に相談する方法もありますが、警察では事件性や緊急性が低い場合は、民事不介入を理由になかなか対応してくれません。
ただし、脅迫や犯罪予告をにおわせる行為をされた場合は警察がすぐに動いてくれますから、ためらわずに相談するようにしましょう。
調査された個人情報の取り扱い【まとめ】

個人保護法も強化された昨今は、探偵事務所や興信所でも個人情報の取り扱いはさらに厳しくなっています。
しかし、中には守秘義務をどれだけ果たしているか疑わしい探偵事務所があるのも事実です。
個人情報は、プライバシーや名誉にかかわるだけでなく、自分の知らない業界に流出して悪用されていることも考えられます。
そのようなことを避けるには、調査されていることに気づいた時点で信頼できる探偵事務所に相談することをおすすめします。
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