こんにちは。
弁護士の林 孝匡です。
今回は【妻 vs ホステス】の裁判をご紹介します。妻がホステスに対して「ウチの旦那と浮気したわね!」と慰謝料請求したケースです。
決め手となったのは、探偵の報告書です。裁判所は探偵の報告書を根拠として「SEXしたと認定する。ホステスは妻に慰謝料70万円支払え」と命じました。
妻も独自に尾行してデート現場に突撃してますが、デートだけでは裁判所は不貞行為を認定してくれません。その後、探偵がラブホテル出入りを激写してくれたことが決め手となりました。
以下、事件を分かりやすく解説します(東京地裁:R3.2.16)
※ 争いを適宜抜粋して簡略化し、判決の本質を損なわないようフランクな会話に変換している箇所があります
当事者
妻 | ・58歳・子ども2人(長女21歳、長男15歳) |
---|---|
夫 | ・58歳・建設会社を営む |
夫の不倫相手(以下「A子」) | ・ホステス ・48歳 |
事件の概要

夫は常連客だった
夫は社長だったので、A子のいるクラブに頻繁に通ってお金を落としまくっていました。
色んなお客さんも連れて行ってクラブの売上げに貢献しており、いわゆる太客でした。
妻が夫の浮気を疑い始める
妻は、以下の事情から夫の浮気を疑い始めました。
- 夫が遅い時間に帰宅するようになる
- 生活費を入れない
- 夫婦間の性交渉が少なくなってきた
夫の車にGPSを取り付ける
妻は「今回のゴルフ、なんか怪しい…」と踏んだのでしょう。
夫の車にGPSをとりつけました。
その結果、ゴルフ場に行く前にA子の家に寄ったことを突き止めました。
デート現場に直撃
夫はゴルフから帰ってきて、再び家を出ました。A子とデートするためです。
妻は夫を尾行し、夫とA子がレストランに入っていくのを突き止めました。そして、レストランの前で待ちました。
夫とA子が食事を終えてレストランから出てきたときに、妻が直撃!夫からすれば地獄絵図です。絶体絶命。山口百恵の歌でありましたね。
妻はA子に対して「下の子がまだ幼くて、父親をとても必要としているので、夜は早く帰して下さいね」と言いました。
そして、夫と妻はタクシーに乗って自宅へ。
車中で夫は妻に「遊びだったから許してくれ。家族を壊してまで続けるようなマネはしないから、やめるから、ちょっと許してくれ」と謝りました。
妻がA子にTEL
妻は夫がA子と別れるとは到底思えませんでした。
なので翌日、妻はA子にTELをかけ「もうこれ以上、家族を崩壊するようなことがあれば、あなたに覚悟があるようであれば、その責任をとってもらいますから」とクギを刺しました。
探偵に依頼
その後も妻は、夫とA子の関係を疑っていました。
そこで妻は、探偵に夫の行動調査を依頼しました。そして、探偵が夫を尾行して以下の決定的証拠をつかむことができました。
- 午後5時31分 山手線大塚駅の改札口を出て、徒歩で移動
- 午後5時42分 コンビニでお酒を購入。その後、徒歩で移動
- 午後5時46分 交差点付近でA子と合流
夫とA子が徒歩で移動 - 午後5時48分 ラブホテルに入る
- 午後7時22分 ラブホテルから出る
妻は夫に探偵の報告書を突きつけました。
はじめは夫は「SEXしてない」と否認していましたが、最終的には妻に謝罪しました。
お次は、妻の怒りはA子に向かいます。探偵の報告書を証拠としてA子に対して慰謝料請求の訴訟を起こしました。
裁判所のジャッジ

裁判所
「不貞行為があったと認定する。A子は妻に慰謝料70万円支払え」
決め手はラブホテルの出入りを押さえた探偵の調査報告書です。
あと「夫が妻に謝罪した」ことも1つの理由として不貞行為を認定しているので、探偵の報告書を突きつけるときには録音しておいた方がいいでしょう。
A子の反論
ーーー ホステスのA子さん、不服ですか?
A子
「はい。SEXしてません。この男性から『電話をしたいんだけど会話を誰にも聞かれなくないからホテルに行きたい」と言われたんです。『女性を連れていないとラブホテルに入れないかついてきてほしい』と言われたからラブホテルに入ったにすぎません。部屋で私は1人でテレビを見ていました。この男性は部屋の隅でずっと電話をかけていました。SEXはしていません」
ーーー 裁判所さん、いかがですか?
裁判所
「その弁解は通らないでしょ…。夫は携帯電話を持ってたんですよ。とすれば、通話内容を聞かれずに電話をかける場所はホテル以外にも多くの選択肢があるでしょ。また、A子はラブホテルの近くで待ち合わせてラブホテルに入ってますよね。これはあらかじめラブホテルに行くことを意図していたと推認できる」
さいごに

不倫裁判では不倫相手が色々な反論をしてきますが、ラブホテルの出入りの証拠を確保できれば、裁判所はほぼ確実に不貞行為を認定します。
「具合が悪くなったのでホテルで休憩しただけだ」「悩み相談を受けていた」などの弁解は裁判所が瞬殺してくれます。
今回、妻は独自に尾行してデート現場までは突き止めたのですが、それだけだと不十分です。
ラブホテルの出入りを激写した探偵の調査報告書がなければ負けていたでしょう。
不倫相手に慰謝料請求したい方は、探偵に依頼して確実な証拠を確保することをオススメします。

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