こんにちは。弁護士の林 孝匡です。
ホントウにあった不倫裁判を解説します（東京地裁 R4.2.18）
【約4時間、一緒に過ごした】ことだけで不倫が認定された事件です。
こと細かに調査した探偵の報告書が決め手となりました。
以下、事件の詳細を解説します。
※ 争いを一部抜粋して簡略化 ※ 判決の本質を損なわないよう一部フランクな会話に変換
当事者
全員、歯医者関係です。
- 妻 元・歯科医師 長女あり（2歳くらい）
- 夫 歯科医師 大学付属病院で勤務
- 夫の不倫相手（以下「Y子」） 歯科医師 夫の後輩（夫と同じ職場）
はい、職場不倫です。
なれそめ
妻と夫は、同期の歯科研修医でした。交際がスタートし、のちに結婚。翌年には長女が生まれました。
夫があやしい…
約1年後のこと。
ーーー どんなことが怪しかったんですか？
妻 「夫が私に対して怒りっぽくなったり、私と距離を置くような感じになりました。あと、夫スマホを手放さなくなったり、飲み会や外泊が増えたんです」
イチャイチャLINE発見！
その3ヶ月後です。夫が寝たあと、妻が夫のスマホを見ると・・・
ーーー どんなLINEが飛び込んできましたか？
妻 「夫とY子さんのLINEやりとりが、わんさか出てきました。4月ころまでは敬語だったんですが、5月以降はキスマークやハートマークを使っていました。あと、↓ こんなLINEやりとりがありました」
==== Y子 「今日うち来る？」 夫 「行くね」 Y子 「待ってる。ビール買っとくね」
====
おはようございます。翌朝、修羅場です。LINEを見られたなんて思ってもみない無防備な夫は、妻から総攻撃を受けます。「これ誰なのよ？」的な攻撃に対して、夫は「ただの後輩だ」と答えました。
ーーー 奥さん、納得できましたか？
妻 「真実を確かめるために、夫のスマホからY子さんに電話をかけました」
ーーー わんぱく！Y子さんのお答えは？
妻 「電話には出たんですが、スグに切られました」
妻は夫に「Y子さんと話し合うために、あなたと一緒に職場に行くわ」と言いましたが、夫は「ダメだ」と拒否しました。そして、夫は妻からスマホを取り上げて、LINEの履歴や写真をすべて消去しました。
探偵に依頼
翌月ころ。妻は「また夫が自分と距離をとるようになった…」と感じ、浮気を疑います。そして、夫の行動調査を探偵に依頼しました。
探偵が調査した結果、夫の以下の行動が明らかになりました。
====
・10/11
午後6時44分に退社して、午後7時16分にY子のマンションに入る
・夫の服装はビジネスモード（Yシャツ&スラックス）
午後7時54分、夫とY子がスーパーに買い物に行く
★ あいあい傘で
★ 夫はカジュアルな服（Tシャツ&スウェット）に着替えていた
午後8時18分、2人がマンションに戻る
〜 ❤️？
深夜0時18分、夫がY子のマンションを出る
====
お泊まりの証拠ではないのですが、至極あやしいですよね。
妻がY子を直撃
ーーー 直撃しようと思ったのは、なぜですか？
妻
「11月ころに夫が『別居を考えている』と言ったからです。まだY子と関係が続いてるんだと思いました」
そして、妻がY子のマンションに行き、マンションまで待ち伏せしました。その後、Y子が出勤するためにマンションから出てきたところを直撃！
妻
「お話し合いしませんか？面談に応じなければ職場に行きます」
Y子は妻の求めに応じ、近くの飲食店でマンツーで妻と話しました。妻は「夫との不倫関係を解消してほしい」と言いましたが、Y子は「不倫していない。証拠を見せてほしい」とシラを切りました。
夫が家を出る
この妻の行動を知った夫は激怒。夫も「Y子と不倫していない！証拠をみせてほしい」とシラを切りました。そして、夫が家を出ました。
妻が提訴
妻が、探偵の報告書を証拠として、Y子に対して慰謝料請求の訴訟を起こしました。
裁判所のジャッジ
妻の勝訴です。
裁判所
「探偵の報告書は信用できる。Y子は妻に慰謝料140万円を払え」
ーーー お泊まりの証拠ではなく、短時間の滞在でしたが、不貞行為を認定した理由は？
裁判所
「▼LINEやりとり（キス・ハートマーク）▼夫がカジュアルな服に着替えている▼あいあい傘だった、などが決め手ですね。これらを総合考慮すれば、単なる知人の域を超えた親密な男女の関係であることを伺わせ、夫がY子の家で肉体関係を持つなどの不貞行為に及んでいたと判断できます」
ーーー Y子さん、何かご反論でも？
Y子
「旦那さんが私の家に来たのは、学術大会の発表の準備作業を手伝うためだったんです。翌日の発表の準備が間に合っていなかったので、私の家で手伝ってもらったんです」
裁判所
「うさんくさいですね。関係証拠（手帳）などによると、そもそも、その発表自体の存在自体が疑わしいです。かりに発表があったとしても、その準備をY子さんの家で行う性質のものではない」
ーーー Y子さん、まだ何か？
Y子
「探偵の調査報告書は信用できません！一部しか提出されていないからです。奥さんにとって不都合な部分は提出されていないんです」
裁判所
「なんら問題はありません。探偵の報告書を信用します」
閉廷！
探偵の報告書強し、です。
探偵の報告書で固める
「不倫してるでしょ！」と問い詰めても、今回の夫やY子さんのように、必ず「不倫していない」と反論してきます。そうなると、こちらが立証しなければなりません。
今回、探偵の報告書がなければ妻は負けていたでしょう…。しかし、探偵の報告書があったので無事、勝訴できました。
今回のように、お泊まりの証拠じゃなくても勝てるケースがあるので、配偶者が怪しい行動をする日がありそうであれば、探偵の依頼することをオススメします。
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