コラム
探偵に浮気調査をされたら名誉毀損で訴えることはできる?

探偵による浮気調査や素行調査は名誉毀損にあたるのかを解説

探偵に浮気調査をされたら名誉毀損で訴えることはできる?

パートナーが探偵に依頼して浮気調査をしていたことが分かったら、不倫を疑われているようで嫌な気持ちになりますよね。

では浮気調査として探偵が自分の日々の生活をこっそり調べていた場合、名誉毀損で訴えることはできるのでしょうか。

はたして探偵による浮気調査や素行調査は名誉毀損にあたるのでしょうか。

今回の記事では浮気調査された場合に名誉毀損で訴えることができるのか、また名誉毀損以外に訴えにつながる違法行為についてくわしく解説します。

株式会社ワンプロテクト 代表取締役

記事の監修担当者:
髙村 一成 氏

人探し・浮気調査・企業調査などを専門として行うプロ集団「FUJIリサーチ」の代表。アドバイザー・企画課・機動課の3つのチームを構成し、これまで累計3000件以上もの調査を成功させてきた。

探偵による浮気調査は基本的には合法

探偵による浮気調査は基本的には合法

知らない間に浮気調査をされていたらとても嫌な気分になりますが、探偵による浮気調査や素行調査は基本的には合法です。

これは尾行や張り込みなどの探偵業務が探偵業法という法律で認められているためで、探偵が依頼されて行う浮気調査は犯罪でも違法行為でもありません。

ただ探偵であっても浮気調査や素行調査の方法によっては名誉毀損などの犯罪行為にあたる可能性があります。

そもそも名誉毀損とは

そもそも名誉毀損とは

名誉毀損という言葉はよく耳にしますが、具体的にどういうことを意味するのかはっきり分からないという人もいるでしょう。

名誉毀損とは公然と事実を摘示することで他人の名誉を毀損することです。

分かりやすくいうと他者がいる場やインターネット上など話が広まりやすい場所で「AさんはBさんと不倫関係にある」といった事実を明らかにして人の名誉を傷つけたり社会的評価を低下させる行為がそれにあたります。

嘘の噂や悪口といった事実と異なる内容を広めた場合も名誉毀損にあたる可能性があるため注意が必要です。

浮気や不倫の事実を職場など第三者に公表された事例

浮気や不倫の事実を公表された場合、名誉毀損として訴えることも可能です。

過去にも夫が同僚と不倫関係にあることを知った妻が不貞行為の事実などが書かれた電子メールを職場の役員を含む従業員全員が閲覧できるメールアドレス宛に送信したケースがあります。

このケースでは名誉を毀損されたとして夫が妻に対して損害賠償請求した結果、名誉毀損に加えプライバシー権の侵害についても認められました。

浮気調査で知り得た事実について会社など多くの人に話が広まる可能性のある場所(または方法)で公表された場合には名誉毀損で訴えることができます。

出典:不倫の暴露による損害賠償が問題となった2つのケース | 川上・吉江法律事務所(岩手弁護士会所属) (kawakami-law.com)

名誉毀損に伴う責任とは

名誉毀損に伴う責任とは

例えば浮気調査で知り得た情報を公表され名誉毀損で訴えた場合、名誉毀損が成立すれば刑事責任と民事責任が発生します。

それぞれについてくわしく確認してみましょう。

刑事責任

名誉毀損罪は刑法230条に規定される犯罪です。

名誉毀損罪は親告罪であるため被害者が刑事告訴をすることで初めて処罰の対象となり、3年以下の懲役もしくは禁錮又は50万円以下の罰則があります。

実は名誉毀損については罰を与えるよりも名誉を毀損されたことで失った損失を取り戻したい人が多いため、刑事責任を問われるケースは多くありません。

ただ浮気調査で知り得た不倫の事実を広められ、社会的評価が低下するようなケースでは刑事告訴される恐れも十分あるでしょう。

なお名誉毀損は告訴できる期間が半年と決まっており、名誉毀損の事実またはその犯人を知ってから半年が過ぎると告訴できなくなるため注意が必要です。

民事責任

名誉毀損は民法で「他人の権利や利益を侵害する不法行為」となっています。

浮気調査で知り得た事実を公表する行為が不法行為と認められれば、その行為を行った者に対して精神的なダメージや失われた信用、権利を慰謝料という形で請求することができます。

その場合の慰謝料は個人の場合10~50万円が相場です。

また名誉毀損がインターネット上で行われた場合には名誉回復措置として文書や記事の削除を請求することも可能です。

出典:不倫の暴露は名誉棄損になるか |法律事務所へ弁護士相談は弁護士法人ALG (dun-laoghaire.com)

浮気調査で名誉毀損以外に考えられる違法行為

浮気調査で名誉毀損以外に考えられる違法行為

探偵に浮気調査をされた場合に名誉毀損以外にもいくつかリスクがあります。探偵による浮気調査で違法行為があった場合、訴えれば刑事責任や民事責任を問うことも可能です。

ここでは浮気調査によって起こり得る犯罪行為についてくわしく解説します。

侮辱罪

侮辱罪は刑法231条に規定される犯罪行為です。

侮辱罪は事実を摘示しなくても公然と人を侮辱する行為とされています。

分かりやすくいえば、他人のいる場所や不特定多数が閲覧できるインターネット上などで誹謗中傷(泥棒猫、尻軽、死ねばいいなど)する行為のことです。

侮辱罪の法定刑は1年以下の懲役もしくは禁錮もしくは30万円以下の罰金又は拘留もしくは科料となっています。

不倫相手の会社に乗り込み、不倫の事実を含めて不倫相手を中傷した場合には名誉毀損と侮辱罪の両方で訴えられる恐れがあるため要注意です。

脅迫罪

脅迫罪とは刑法222条に定められた犯罪行為で、生命や体、自由、名誉又は財産に対して危害を加える旨を被害者やその親族に告知して脅迫することです。

この告知を「害悪の告知」といいます。脅迫罪には未遂の規定がないため、この害悪の告知があって初めて脅迫罪が成立します。

なお脅迫罪の法定刑は2年以下の懲役または30万円以下の罰金です。

その他、違法行為で訴えられる可能性があるケース

名誉毀損に伴う責任とは

適切に行われる探偵の浮気調査で訴えられる心配はありませんが、中には名誉棄損などの違法行為で訴えられるケースもあるため注意が必要です。

ここでは名誉毀損や侮辱罪などの他に探偵の浮気調査が違法行為として訴えられる可能性があるケースについていくつか紹介します。

浮気調査を探偵に依頼することをお考えの方や知らない間に浮気調査をされていた方はこのような違法行為がないか確認し、問題があれば一度弁護士に相談してみるのもひとつの方法です。

復讐など犯罪を助長するような調査を行った場合

探偵は依頼されて浮気調査や素行調査を行いますが、復讐やストーキングなどの犯罪を助長するような調査を行ってはいけないことになっています。

もし依頼人が対象者をストーキングしていて、探偵が行った浮気調査で知り得た情報からトラブルに巻き込まれるようなことがあれば重大な責任問題です。

復讐のため探偵に浮気調査を依頼しようとお考えの方は絶対に止めましょう。

証拠を得るための過剰な浮気調査(尾行や張り込み)

配偶者の不倫を理由に離婚や慰謝料を請求する場合には不貞行為(配偶者以外の人と肉体関係があること)を示す証拠が必要です。

そのため浮気調査を依頼された探偵の中には、浮気の証拠を獲得するためにストーカーまがいの過剰な尾行や張り込みを行う人もいます。

とくに調査力の低い探偵は無茶な調査を行う傾向があるようです。

トラブルになった場合、依頼人にも迷惑がかかる恐れがありますから合法的に調査を行う探偵に調査を依頼することをおすすめします。

他人の敷地内に不法侵入した場合

探偵に浮気調査を依頼した場合、浮気の証拠を獲得するために他人の敷地内に不法侵入などの違法行為をしてしまうケースも少なくありません。

具体的には不倫相手の家の敷地内に入って写真を撮ろうとしたり、住居に侵入して盗聴器を仕掛けるといったことです。

探偵は浮気調査や素行調査を行うにあたって刑法や民放など探偵業法以外の法律も遵守しなければいけません。

浮気調査を依頼する際にはトラブルに巻き込まれないよう合法的に調査を行う探偵業者を選ぶことが大切です。

プライバシーを侵害した場合

探偵による浮気調査では対象者のプライバシーがある程度明らかになります。

しかしながら探偵が依頼を受けて合法的に行う調査がプライバシーの侵害とみなされることは基本的にありません。

仮に浮気調査が対象者にバレてしまった場合でも依頼者がトラブルに巻き込まれることもないでしょう。

ただ依頼を受けた探偵が浮気調査で知り得た情報を不特定多数の第三者に公表した場合には名誉毀損やプライバシーの侵害で訴えられる恐れがあります。

記事まとめ

記事まとめ

今回の記事では配偶者が探偵に依頼して浮気調査していたことが発覚した場合に名誉毀損で訴えることが可能なのか、また名誉毀損以外に浮気調査で起こる可能性がある違法行為や犯罪行為について解説しました。

探偵が行う浮気調査や素行調査は探偵業法をはじめとするさまざまな法律を遵守した上で行われていれば名誉毀損で訴えることは難しいでしょう。

逆に浮気調査を依頼する場合には名誉毀損で訴えられることがないよう、合法的に調査を行う探偵事務所を見きわめることが大切です。

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